GA4が自動で外すボットは、GoogleとIABのリストで「既知」とされたものだけで、外した量を見ることも、この除外を止めることもできません。管理画面のデータフィルタで外せるのは内部トラフィック(IPアドレス)・デベロッパー・ホスト名の3種類で、国やユーザーエージェントでは外せず、外したデータは戻りません。そのため、疑わしいアクセスは「見るときに外す」で扱い、それでも外しきれない前提で、判断ごとにボットが混ざっても結論が変わらない数字(検索ならSearch Console、登録や購入なら自社の記録)を先に決めておくのが、私たちの結論です。
観察:28日間のセッションの4割強がボットの塊だった
このサイト(ディレベース)のGA4を、2026年10月6日から11月2日の28日間、チャネルと国で分けました。社内のアクセスは内部トラフィックのデータフィルタで除いてあります。割合は全セッションに占める割合、エンゲージメント率は各行の中での割合です。
| 国・チャネル | 割合 | エンゲージ率 | 平均滞在 |
|---|---|---|---|
| 日本・Direct | 27% | 45% | 約3分 |
| シンガポール・Direct | 27% | 2% | 約4秒 |
| 米国・Referral(参照元は1つのドメインだけ) | 12% | 0% | 0秒 |
| 日本・Organic Search | 7% | 55% | 約1分50秒 |
| 中国・Direct | 5% | 5% | 約3秒 |
シンガポールのDirect、米国の1つのドメインからのReferral、中国のDirectの3つを足すと、全セッションの44%になります。3つとも、エンゲージメント率が0〜5%、平均滞在が数秒です。検索から来た人(日本のOrganic Search)の55%と比べると、同じ「セッション」という単位で数えてよいものではありません。
シンガポールのDirectは、7月末に調べたときもDirectのユーザーの59%を占めていました(次の節で書く失敗の原因です)。少なくとも3か月、GA4の自動の除外をすり抜け続けていることになります。一方で、日本のDirectは45%がエンゲージしていて、ブックマークや社外の資料のリンクから来た人が多いと考えられます。「Directはボット」と一括りにすると、こちらまで捨てることになります。
GA4が自動で外すもの・外さないもの
アナリティクスのヘルプによると、GA4は既知のボットとスパイダーのトラフィックを自動で除外します。「既知」の判定は、Google自身の調査と、IABが管理する International Spiders and Bots List の組み合わせです。そして、この除外を止めることも、除外された量を確認することも、現時点ではできません。
ここから言えるのは、リストに載っていない自動のアクセスは、ブラウザでタグのJavaScriptを動かせば、人の訪問と同じように数えられる、ということです。上の表のシンガポールや中国の塊は、まさにこの形です。GA4の画面に出ている数字は、「既知のボットを引いた後」の数字であって、「ボットを引いた後」の数字ではありません。
自分で外す手段は2つに分かれます。1つは管理画面のデータフィルタで、種類は内部トラフィック(IPアドレスで指定)、デベロッパー、ウェブのホスト名の3つです。国やユーザーエージェントで外す種類はありません。データフィルタは作った時点以降のデータにだけ効き、ヘルプは影響が恒久的で、除外したデータはGA4でもBigQueryでも使えなくなると書いています。もう1つは探索レポートのフィルタや比較、セグメントで、こちらは元のデータを残したまま、見るときだけ外します。
上位の解説記事の多くは「探索でこう外す」「GTMでこう止める」という手順で終わっています。手順は正しいのですが、どれも「外せば正しい数字になる」という前提に立っています。私たちが実際に困ったのは、外し方ではなく、外し残しがあるまま判断してしまったことでした。
私たちが判断を誤った経緯
2026年7月、検索以外の集客として、制作会社などへ直接案内を送る施策を始めました。始めた週、GA4のDirectのユーザーがはっきり増えました。案内を受けた人はURLを直接開くのでDirectに入る、という筋の通った見立てで、Directの数字を施策の効果と読み、検索からの集客の4倍の効果があると見積もりました。
ところが、同じ期間のDirectを国で分けると、ユーザーの59%がシンガポールのエンゲージメントの無い訪問でした。Directの数字は、そもそも施策の効果をそのまま読める状態ではなかったのです。自社のデータベースで、案内の送付先とツールの実行記録を突き合わせると、実際にツールまで来たのは送付先の4.5%でした。施策が無駄だったわけではありませんが、「検索の4倍」は、ボットの混ざった数字を施策の手柄として読んだ結果でした。
この失敗の型は、「施策の開始」と「ボットの増加」がたまたま同じ時期に重なると、日次の差分ではどちらの効果か区別できない、というものです。ボットの塊は予告なく来て、予告なく去ります。前後比較は、比較している期間にボットの量が変わらないことを暗黙の前提にしています。
設計:外し方を3つの層に分ける
| 層 | 手段 | 戻せるか | 向くもの |
|---|---|---|---|
| 集めるときに捨てる | データフィルタ(内部トラフィック=IPアドレス/デベロッパー/ウェブのホスト名)、GTMで送らない | 戻せない | 自社由来と確実に分かるものだけ(社内のIP、テスト環境、他人のサイトに貼られた自社タグ) |
| 見るときに外す | 探索のフィルタ、比較、セグメント(国・参照元・エンゲージメントの有無) | 戻せる | 疑わしいが確証の無いもの。ボットの大半はここで扱う |
| 判断に使わない | 判断ごとに、ボットが混ざっても結論が変わらない数字を選んでおく | ― | 外しきれないことを前提にした最後の防衛線 |
線を引く基準は「確証があるか」です。社内のIPやテスト環境は確証があるので、集めるときに捨ててかまいません。シンガポールのDirectは、エンゲージメントの数字からほぼボットだと言えても、その国から来る本物の訪問者がゼロだという確証はありません。こういうものを戻せない層で捨てると、後で前提が変わったときに取り戻せません。私たちはGA4の設定を変えず、集計のたびに国・参照元・エンゲージメントの有無で外す運用にしています。
ただ、見るときに外す層には弱点があります。毎回、同じ条件で外す手間がかかり、外す条件を知らない人が画面を開けば、汚れた数字をそのまま読みます。だから3つ目の層が要ります。
判断ごとに、ボットに強い数字を正本にする
3つ目の層は、外すことではなく、判断に使う数字の選び方です。判断したいことを先に並べ、それぞれ、ボットが混ざっても結論が変わらない数字を正本に決めます。私たちは次の表で運用しています。
| 判断したいこと | 正本にする数字 | 判断に使わない数字 |
|---|---|---|
| 検索からの集客が伸びたか | Search Console の表示・クリック・順位 | GA4のセッション総数、Directの増減 |
| 施策で登録・購入が増えたか | 自社のデータベースや決済の記録(アカウント単位) | GA4の日次の差分、施策開始の前後比較 |
| 記事が読まれているか | 検索から来たセッションのうちエンゲージメントのあったもの | 表示回数の総数、平均滞在時間 |
| 海外に需要があるか | Search Console の国別の表示 | GA4の国別ユーザー数 |
Search Consoleの表示とクリックは、Googleの検索結果の上で起きたことの記録です。サイトへ直接来る自動のアクセスは、そもそもこの数字に入りません。登録や購入は、アカウントや決済という、自動では作りにくい単位で数えられます。どちらも、GA4のセッションより「ボットが入りにくい場所」で数えている、というのが選んだ理由です。
GA4を使わないという意味ではありません。どのページから入りどこで離れたか、という行動の形を見るにはGA4がいちばん向いています。行動を見るときは、検索から来たセッションなど、ボットの少ない入り口に絞って見ます。総数や前後比較のように、ボットの量の変化がそのまま結論に入る使い方だけを避けます。
この設計が破綻するケース
エンゲージメントをまねる自動アクセス
GA4の「エンゲージメントのあったセッション」は、10秒以上続く、キーイベントが起きる、2ページ以上見る、のどれかを満たした訪問です。今回の塊は数秒で離れていたので見分けられましたが、10秒待ってから2ページ目を開く自動アクセスは、この条件を満たします。エンゲージメント率で隔離する方法は、ボットが作り込まれるほど効かなくなります。
人の代わりに動くAIエージェント
ブラウザを操作して、人の代わりに調べたり申し込んだりするAIエージェントが出てきました。ここまでの設計は「ボット=判断から外すノイズ」という前提に立っていますが、エージェントが依頼者の代わりに登録まで済ませたなら、その登録は本物の成果です。その時に問うべきは「人か機械か」ではなく「誰の代理か」で、GA4にはそれを区別する項目がありません。登録や購入を自社の記録で数えておく理由は、ここでも効きます。アカウントの側には、少なくとも誰の登録かが残るからです。
正本の側にも除外が要る
自社のデータベースを正本にしても、それで終わりではありません。同じ28日間の私たちのツールの実行記録では、89%が社内や取引先など、セルフサーブの利用者ではないアカウントによるものでした。GA4では内部トラフィックのフィルタで消えている分が、データベースには残っています。正本にする数字にも、どのアカウントを数えないかの一覧が要ります。私たちは除外するアカウントを1か所に書き、集計のたびに同じ一覧を使っています。
もう1つ、母数の小さいサイトでは、1つの塊で割合が大きく動きます。今回の米国のReferralは、たった1つのドメインで全セッションの12%でした。小さなサイトほど、割合の変化を見たら、まずどの塊が動いたかを確かめてから解釈してください。
次の一手:設定より先に、判断の表を作る
GA4の数字がおかしいと気づいたとき、最初に設定画面を開きたくなります。私たちのおすすめは逆で、先に「この数字で何を決めるのか」を書き出すことです。決めることが分かれば、ボットを外す必要があるのか、別の数字を正本にすれば済むのかが分かります。クライアントへの報告でも、ボットの増減でぶれる総数ではなく、正本の数字で成果を話せます。
検索の数字をGA4と組み合わせて読む手順はGA4でSEOを改善する方法、施策の効果を Search Console で確かめる設計はSearch ConsoleでSEO施策の効果を検証する方法に書いています。
関連ツール
出典(2026年11月4日に確認)
よくある質問
GA4にボットを除外する設定はありますか?▾
シンガポールや中国からのDirectが急に増えました。データフィルタで除外すべきですか?▾
エンゲージメント率でボットを見分ける方法は確実ですか?▾
施策の効果をGA4の前後比較で測るのは、なぜ危ないのですか?▾
AIエージェントの訪問は、GA4でボットとして扱うべきですか?▾
自社のデータベースを正本にすれば、ボットや内部の利用は気にしなくてよいですか?▾
数字を読む前に、ページの土台を確かめる
URLを入れると、titleや構造化データ、インデックスの妨げなど、検索に正しく伝わっているかを45項目で確かめます。正本にする検索の数字を伸ばす土台です。
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この記事を書いた人
今井政和SEOディレクター / フロントエンド開発者
Web業界20年以上の経験を持つSEOディレクター。ディレベースの開発者。WordPress公式プラグイン「ORECTIC SEO CHECK」作者。著書に「三方良しで勝つ 江戸商人に学ぶ現代WEB戦略」。
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